平成16年より、当財団の奨学金受給者を対象として、自然環境保全の現場において学生間および学生と現地の人々との相互理解を高めることを目的とした学生交流事業を途上国内で実施しています。本事業は、数日から一週間にわたって実施され、その内容は学生による自然環境保全についての発表や関連施設の見学、野外調査の体験など多岐にわたります。事業の実施には、奨学金支給と同様に、各国の協力機関の協力を得ています。
バングラデシュの奨学生を対象とした4回目のワークショップが、2024年5月18日にBangladesh Agricultural Universityにて開催されました。天然資源管理における環境汚染問題というテーマのもと、各大学の奨学生が口頭・ポスターにて発表を行いました。
バングラデシュの奨学生が、自国の環境、資源、保全等について学んだことを発表するワークショップを、過去2回(2017年、2019年)実施してきました。
3回目となる今回は、Sher-e-Bangla Agricultural Universityにて2023年2月11日に開催し、同国奨学生120名および教職員20名が参加しました。当財団からは、3名(河野理事長、菰田常務理事、大泉)がリモートで参加しました。“Nature Conservation in Context of Climate Change in the Perspective of Bangladesh”というテーマのもと、各大学の代表学生が口頭・ポスターにて発表を行い、活発に意見交換を行いました。会の終わりには、最優秀発表者を参加者が投票し、互いの健闘を称えました。最優秀発表者は、口頭発表部門ではMonika Akhter (JU) とMehedi Hasan (BAU) 、ポスター部門ではImran Khan (DU) とAsraful Hoque (BAU)が選ばれました。
同国におけるワークショップは、NEF Bangladesh Committee、奨学金の対象である5大学(Bangladesh Agricultural University: BAU, Bangabandhu Sheikh Mujibur Rahman Agricultural University: BSMRAU, Dhaka University: DU, Jahangirnagar University: JU, Sher-e-Bangla Agricultural University: SAU)の協力により実現したものです。
これまで奨学生を対象とした野外活動を支援してきましたが、2011年度はインドネシアとカンボジアにおいて、奨学生ではない学生等を対象に支援を行いました。
NGOのオランウータン情報センター(Orangutan Information Center: OIC)の協力と監督の下、北スマトラ大学生物学科の学生を対象とした野外活動を支援しました。学生達は、グヌン・ルスル国立公園において、劣化した森林の再生活動(苗木栽培、種子採集、植樹・管理等)に参加したり、森林の再生過程を説明するマニュアルの作成に携わりました。
また、OIC職員もチェンマイ(タイ)で開催された「森林再生研修ワークショップ」に参加し、熱帯雨林の天然更新について最新手法等を学びました。職員らは森林再生の考え方、養苗、再生の監視手法を学ぶとともに、同ワークショップの開催者である森林再生研究ユニットが実施した森林再生の現場を見学しました。帰国後は、研修で得た知見を踏まえ、OICの森林再生への適用に取り組んでいます。
僧侶とアンコール大学の学生が、小学生に対して行う生物多様性の普及啓発活動を支援しました。小学生に、生物の世界、人々の生活との関わりなどを説明し、身近な自然の大切さを伝えました。
また、同僧侶はインドネシアを訪問し、スマトラ島の北スマトラでは熱帯雨林とその保全、スラウェシ島北部のブナケンではサンゴ礁域について学びました。同僧侶は小さな野生動植物、特に昆虫類に高い関心を示すなど有益な研修となったようです。
フィリピンのプエルト・プリンセサ市において、NEF奨学生のためのワークショップが2009年2月10日から16日の期間で開催されました。各国奨学生同士の交流を主目的としたワークショップには、インドネシアから3名、ベトナムから5名、ラオスから6名、フィリピンから14名の合計28名の奨学生が参加しました。期間中、チーム育成、研究・活動発表、文化交流会、自然保護区散策、野生動物保護施設訪問、環境教育の実施、マングローブ林の保全活動など様々な活動に参加するとともに、参加者同士で活発に意見交換を行い、交流を深めました。
今回のワークショップは、プエルト・プリンセサ市役所、パラワン州立大学(PSU)の協力により実現したものです。特に、フィリピンのNEF奨学生たちは、ワークショップの内容や構成を提案し、その準備と運営にも積極的に携わりました。
プエルト・プリンセサ市に到着した各国からの参加者を、空港でPSUの学生が出迎えました。会場であるPSUで昼食をとり、参加者たちは市内散策に出かけました。また、夕方には市が主催した夕食会で、フィリピンの民族舞踊や歌などを鑑賞しました。
開会式後、チーム育成研修に参加しました。チームやリーダーについて話し合い、またゲーム等を通じてこれから行動を共にするグループのチーム力を高めました。
ラオスの学生が作ったラオス料理が夕食に並び、普段食べる機会の少ない異国の味を楽しみました。夕食後は、各国の学生が伝統衣装を身にまとい、踊りや歌を披露しました。
早朝、プエルト・プリンセサ地底河川国立公園に向かいました。この地域は石灰質のカルスト地形で、同公園内には全長約8.2kmの地下河川が流れる鍾乳洞が形成されています。同河川は南シナ海に流れ込み、下流部は潮の干満の影響を受けるため独特の生態系を有しています。公園周辺には、山と海の生態系が隣接した珍しい環境、また保全上重要な森林地帯が広がっており、様々な生物の重要な生息地となっています。これらの特長から、1999年にUNESCOの世界自然遺産に登録されました。
午前中はツアーガイドの案内で地底河川を見学し、午後はマングローブ保護区のボートツアーに参加しました。夕食後は、小学校で実施する環境教育の準備(歌の練習や小道具の準備など)を行いました。
公園近くのManturon 村内の小学校で、小学生を対象とした環境教育を行いました。歌や踊り、ゲーム等を通して、自然環境保全の大切さを小学生に伝えました。午後は、野生動物保護園(ワニ園)を訪問し、ガイドの案内で園内の博物館やワニの養殖所を見学しました。
プエルト・プリンセサ市が主催する植林イベントLove Affair with Nature(母なる自然への愛)に参加しました。このイベントは、マングローブが生態系の中で果たす役割や、沿岸域生態系の重要さを市民に伝えるため、毎年行われています。イベント当日は、日が昇らないうちから多くの市民が集まり、マングローブの苗を沿岸域に植林します。学生たちも一般参加者と一緒に、植林を行いました。
各国の参加者が、自国の自然環境や、自身が関わっている保全活動の内容について発表を行いました。
各国の発表後、グループ毎にワークショップの活動を振り返り、感じたことや、学んだこと、自然環境保全について今後取り組みたいこと等を発表しました。
夕食後には、フィリピン奨学生が中心となって、送別会を行いました。
マレーシア・サバ州にて2008年1月22日から27日までの期間で、ワークショップ「NEF Student International Workshop 2008 in Sabah」を実施しました。マレーシア奨学金プログラムの委託先であるマレーシア大学サバ校熱帯生物保全研究所(UMS-ITBC)教員のDr. Hamid Mohamedを中心に、同校のNEF奨学生たちが積極的に準備と運営に携わりました。インドネシア、フィリピン、ベトナム、ラオスの各国から5名ずつ、マレーシアからは9名の合計34名の奨学生らが参加しました。期間中、参加者は積極的に活動に参加し、また学生間で交流を深めていました。
UMS-ITBCの学生が空港で出迎え、夕方から午後にかけて各国からの参加者がコタキナバルに到着しました。夕食後、親交を深めるために自己紹介やゲームを行いました。
UMS-ITBCのホールで行った開会式では、ITBC所長のDr Maryati Mohamedによる基調講演「ボルネオの自然」に続き、各国の参加者が30分程度ずつ各自の研究成果や各国の自然環境保全事情について発表を行いました。
夕食後、各国学生が踊りや歌を披露する文化交流会を行いました。
朝6時より、コタキナバル・ウェットランドセンターにおいて、バードウォッチングを行いました。また、同センターの環境教育職員の案内で、木道沿いに散策をしました。
同センターで朝食を済ませたあと、バスでクリアス半島へ移動した。国連開発計画地球環境ファシリティ(UNDP-GEF)の資金で2007年に設立されたPeat Swamp Conservation Centreを訪問し、職員から泥炭湿地の重要性、管理、モニタリング計画等について説明を受け、モニタリングサイトを見学しました。
さらにバスでクリアス川に移動し、ボートからテングザルやホタルを見学しました。
キナバル山国立公園に向けてコタキナバルを早朝にバスで出発しました。午前中は公園内のポーリング温泉地域にて公園事務所を訪問し、レンジャーの案内でキャノピーウォークとバタフライガーデンを見学しました。
午後は公園の中央事務所に移動し、サバ州公園局研究所の職員の指導のもと、学生ひとりずつが小動物用のワナや、カスミ網を森に設置しました。
夜間は、ワークショップ最終日の活動発表を準備するためのグループワークの時間としました。
朝6時に出発し、前日に設置したワナとカスミ網の確認に行き、フルーツバット2個体とmugimaki flycatherを実験室に持ち帰りました。公園局研究所の職員とUMS教員が、採集した動物を使って計測の方法と標本をつくるための処理方法を説明し、その場で剥製づくりを学生たちに見せてくれました。
公園内の植物園Mountain Gardenに移動し、レンジャーの案内で見学しました。
コタキナバル市内のレストランで夕食会を行いました。
コタキナバル市内中心部での日曜市を見学した後、国別に帰路につきました。
ベトナムのクックフーン国立公園において、NEF奨学生のための交流事業が2007年1月22日から26日にかけて開催されました。NEFが奨学金を支給している6カ国(ラオス、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、フィリピン)より、合計22名の奨学生、大学教員と各国の協力機関のスタッフが参加しました。今回の国際交流は、ベトナム国立大学ハノイ校天然資源・環境研究センターの協力により実現したものです。4泊5日の期間中、講義、奨学生達による研究発表、自然散策、自然保護施設への訪問、実地見学、文化交流会など様々な活動が実施され、学生たちは活発に参加し交流を深めました。
インドネシアの奨学生を対象に、グヌン・ハリムン-サラク国立公園周辺の2つの集落において、約10日間(平成17年3月15日~24日)のホームステイを通じた学生交流事業を行いました。公園当局、研究者、地元NGOならびに地域住民と協働し、希少な野生生物の保全およびモニタリングの調査方法等を修得するとともに、地元小学校で環境教育活動等を体験しました。今回の事業には、奨学金支給事業の対象である5大学から選抜された15名、国際交流として日本から自費参加した学生1名、各機関の職員の計28名が参加しました。
学生交流事業の目的の達成程度をはかるためアンケートには、「地元村落でのホームステイが貴重な経験となった」、「異なる大学や日本からの参加者と交流を持つことができた」、「生態系、国立公園管理、地域の社会経済を総合的に考える良い機会となった」、「自然環境保全の様々な面について考えることができた」、「フィールドでより多くの経験を積むことが必要だと感じた」といった回答が寄せられました。
本事業は地元での関心も高く、交流事業に同行したスタッフ以外の公園職員や地元NGO、研究者等もたびたび見学に訪れていました。学生たちにとっては、インドネシアの学生間のみならず、地域住民や日本人関係者との交流を持つよい機会となったようです。また、現場体験を通じ、自然環境を保全するために必要な知識や経験の重要性を理解する一助となったことでしょう。今後も各参加者が、本事業を通じて得た情報や経験、ネットワークを活用していくことを望みます。
長尾自然環境財団
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