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フィリピンの河川産魚類相、特に通し回遊魚類相の解明~黒潮流域を中心とした周辺国への仔魚の供給源の解明に向けて~(事前調査)(概要)

概要

フィリピンの河川産魚類の分類および魚類相の研究は、第2次世界大戦前にアメリカ人研究者A. W. C. T. Herre博士によって多くなされた。しかし、マニラに置かれていたタイプ標本は戦争中に全て失われ、その後フィリピンの河川産魚類の分類学的研究はわずかしか行われていない。フィリピンの河川産魚類相を理解するために、最新の知見に基づく分類学的再検討が必須である。フィリピンの中でも地域によって魚類相は異なり、狭い地域の固有種、固有集団もあると考えられるが、現状ではその知見は非常に乏しい。フィリピンでは、開発が進み、ティラピア類やグッピーなどの外来種が広く分布するなど、河川の生物多様性が失われつつあると考えられ、魚類相や集団構造の解明はその保全のために急務となっている。

フィリピンの河川に住む魚種の多くは、海で浮遊仔魚期を過ごす通し回遊魚であると推測される。それらの中には、浮遊期に仔魚が遠く離れた別の川、別の島に分散するチャンスを持つものがある。しかし、その分散機構に関する知見は乏しい。例えば、日本の黒潮沿岸域の河川では、東南アジアから運ばれてきたと推測される稀な魚が時折見つかるが、分類学的研究の欠如により種同定できないことが多く、また正確な分布情報が得られないために供給源の候補となる地域すら特定できない場合が多い。また、普通種の中にも東南アジアから毎年多数の仔魚が加入している種があると推測されるが、その分散の実態は不明である。フィリピンは、周辺国、特に黒潮流域の台湾や日本への仔魚の供給源として重要な地域であると予想されるが、地域間のコネクティビティは不明である。フィリピンにおける分類と魚類相の解明は、フィリピンのみならず周辺国の生物多様性の保全にも貢献し、さらに、仔魚の分散機構の解明、海を越えた淡水魚の移動という興味深い生態の理解へとつながる重要な知見をもたらすことが見込まれる。

このプロジェクトでは、フィリピンの複数地域で魚類相の解明を行う体制を作るための予備調査を行う。

 

 

実施体制(2024年12月現在)

主研究者と組織

前田健研究員(沖縄科学技術大学院大学 海洋生態進化発生生物学ユニット)

共同研究者

日本 飯田碧准教授(北海道大学)
小林大純研究員(千葉県立中央博物館)
平瀬祥太朗准教授(東京大学)
フィリピン Herminie P. Palla(Western Philippines University)
Emma L. Ballad (Bureau of Fisheries and Aquatic Resources)
Jemimah Ziegler (Bureau of Fisheries and Aquatic Resources)
Glycinea M. de Peralta (Cagayan State University)
Ernesto S. Del Rosario, Jr. (Mariano Marcos State University)

 

活動報告

2024年11月21日から12月1日にかけてフィリピン調査を実施しました。

  • 野外調査実施期間:11月22日から11月30日まで
  • 場所:フィリピンのパラワン島およびルソン島北部
  • 調査報告書:PDF 3MB

 

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