生物多様性の喪失の危機が認識されて以降、世界中で調査研究が実施されてきたが、未だに多くの種が絶滅の危機にある。その要因の一つとして、生物多様性保全に資するとした学術研究の多くが実践に活かされていないことが指摘されている。この学術研究と実践の乖離は、保全生物学において重要かつ深刻な課題と捉えられており、乖離解消の原因や解決方法を模索する研究が多く行われてきた。例えば、研究者が社会実装までコミットすることで、円滑に科学的知見が移転され、科学的根拠に基づく保全の実践が可能となることや、行政や地域の利害関係者とともに調査研究を行いながら、保全策へとつなげるようなアプローチも提案されている。しかしこれらは、特定の保全策に着目した提案であることが多く、保全プログラムの実施体制の構築までを対象とする包括的な実証研究は限られている。
そこで、本研究では、科学的根拠に基づく保全策の実施に向け、科学的データの取得、そのデータに基づく保全策のデザイン、保全策の実装/導入、長期的な実施を可能にする体制の構築までを対象とする。特に地域の学生と地域住民らが中心となり自走できる保全策を目指し、キャパシティビルディングを兼ねた形で進める。
研究および保全対象は、バングラデシュ北東部のスナドリネコ (Prionailurus viverrinus)とする。スナドリネコは南・東南アジアの主に湿地に生息する中型のネコであり、バングラデシュは湿地の大きさから重要な生息国となっている。だが、人によるスナドリネコの捕殺が大きな脅威となっており、特に同国最大の湿地地帯である北東部で深刻である。本研究はスナドリネコの個体群の保全に向け、以下を主な目的とする。
鈴木愛助教(立命館大学OIC総合研究機構)
日本 | 桜井良准教授(立命館大学政策科学研究科) |
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バングラデシュ | Dr. Mohammad Abdul Aziz(ジャハンギナガル大学動物学部 教授) +修士課程卒業の若手2名 |
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